第9回日本産科婦人科遺伝診療学会学術講演会開催のご挨拶

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第9回日本産科婦人科遺伝診療学会学術講演会

会長杉浦真弓

(名古屋市立大学大学院医学研究科産科婦人科 教授)

2023年12月15日(金)-16日(土)にウインクあいち(名古屋市)において第9回日本産科婦人科遺伝診療学会学術講演会を開催いたします。
特別講演には、名古屋市立大学昭和60年卒が誇る中西真東京大学医科学研究所癌防御シグナル分野教授に「老化を克服して健康長寿を目指す」をお願いしました。
テーマは「遺伝子の未来を考える」です。

遺伝技術の進歩により、受精卵における遺伝子の選択、改変が可能となってきました。Preimplantation genetic testing for polygenic disease (PGT-P)の研究も出現しました。
日本産科婦人科学会は受精卵の染色体異数性を調べる着床前スクリーニングを倫理的理由から禁止してきましたが、不育症、不妊症患者さんの高年齢化に伴い、その意義を調べる特別臨床研究を行ってきました。小規模のパイロット研究の研究成果を2019年12月にHuman Reproductionに発表し、その後全国で100施設が参加する大規模臨床研究を実施してきました。2022年1月には「不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査PGTに関する見解」が遺伝性疾患を避ける目的のPGT-Mと独立した見解として改訂され、実質的にPGT-Aを認めることになりました。ただし、PGT-Aを行うと出産率が改善されることは証明されていません。

今どきの若者は、顔が小さく、美しく、足が長くなってきました。好まれるルックスには時代によって流行がありますが、好まれる形質が異性から選ばれ子孫を残すため、それに関連する遺伝子variantsの頻度が増えていることが推測されます。長い年月をかけてvariants頻度が自然に変化していることは間違いないでしょうが、これらを人為的に選択、改変することによって人類に影響はないのでしょうか?地球温暖化やプラスチックゴミによる環境問題のように予測困難な変化が遺伝子に起こらないでしょうか?

不育症、不妊症、老化の克服とともに、遺伝子の未来について考えてみたいと思います。多くの会員の皆さんに発表していただき、名古屋での学術講演会を楽しんでいただきたいと思います。